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どきどきの「どきん」2022年版

 

 

 

今年も小3の、どきん発表会の時期がやってきました。

 

谷川俊太郎さんの詩「どきん」を暗記して、

みんなの前でホワイトボードに書いて発表します。

ルールはこれまでと同じ、「後ろを振り向いたら終わり」です。

 

手話が第一言語のろう児にとって、学習中の日本語で書かれた文章は、

分厚い手袋越しに物を触るような、捉えきれないもどかしさがあります。

抽象度の高い詩ならなおさらです。

 

そんな時、やはり助けとなってくれるのは手話です。

詩の理解を深めるため、まずは元の詩のリズムやオノマトペ、

最後の一文に向かって加速する高揚感を、

教員が見事に手話に翻訳した、手話ポエム動画を視聴します。

 

子どもたちは一緒に手話ポエムを表出し、詩を楽しみます。

それから徐々に、手話版「どきん」を手立てにして、

日本語で書かれた元の詩と仲良くなっていきます。

 

今日は一行、明日は二行と、少しずつ書いて覚えてを続けて、

発表会の前日に、ようやく全員が十行覚えて書けるようになりました。

 

発表会当日、ギャラリーはこれまでで最も多い小学部全員!

小1・2の子どもたちは「これを全部覚えたんだ!」と羨望の眼差しで小3の背中を見つめ、

小4〜6の子どもたちは「懐かしいね」「わたし、間違って泣いちゃったんだよね」

なんて思い出話をしながら応援します。

 

「そこ、違う!」

「〇〇、がんばれ!」

「できてるから大丈夫、振り向いていいよ!」

 

背中を向けている小3にはわからないと知ってはいても、

それぞれが一生懸命、手話で話しかけます。

 

小3全員がようやく振り向き、小4が教科書片手にチェックします。

小4が首を傾げたり、書かれた詩を指で辿る姿を、みんなで固唾を飲んで見守ります。

両手をギュッと握りしめ、思わず祈るような姿の子もいます。

果たして結果は?

毎月5のつく日は〇〇デー

 

 

朝、先生から事務室に声がかかりました。

「子どもたちが備品をとりに来るので、筆談の対応お願いします!」

 

明晴学園では、「しかあり」という、以下の4つの力を

伸ばすことを重点に、教育活動を展開します。

 

「し」る(知る)

「か」んがえる(考える)

「あ」らわす(表す)

「り」ようする(利用する)

 

小学部は、このうち最後の「り」に力点をおくことを、今年度の学部目標にしています。

何かできないかと思案していた先生が、スーパーのお客様感謝デーにヒントを得て、

毎月「5」のつく日を、楽しく日本語を使う「にほんごデー」にしようと、思いついたのです。

 

朝の会で、先生が「おはようございます」と板書しました。

子どもたちは、手話であいさつしない先生に、一体なにが起こるんだ?とザワザワ。

その場で、にほんごデーのことを聞かされた子どもたちは、

「えーーー!」と、さらにザワザワザワ。

 

ろう児にとって日本語は、母語の手話ほど自由に使えない第二言語です。

明晴には日本語という授業があり、国語の教科書や副教材を使って、

日本語の読み書きなどを、手話を通して学んでいきますが、

低学年の子どもたちにとっては、習い始めの外国語と同じ、

ザワザワするのも当然です。

 

 そこに、さらに先生の容赦ない指示が飛びます。

「事務室でホワイトボードをもらってきてください。筆談でね。」

「えええー!」「えーー!」

 指名された2人は突然のことに大慌て。

文章は先生から提示されるものの、2階の事務室に行って書きはじめるので、

廊下を歩いているときも、階段を上がっているときも、

一生懸命、2人で指文字を出し合っていました。

 

動画はそこから後の話。果たして筆談は成功するのか?

自分の書く番が終わっても、もうひとりの子が書く文章を、

一文字ずつ頷きながら応援したり、

「「た」じゃなくて「だ」じゃない?」

と言われて、濁点の位置に自信がなくなったり…。

 

自分たちが書いた文章を事務員さんが読んで、

ホワイトボード消しをもらえるまでの、緊張感みなぎる2人の様子と、

全てが終わったあとの、解放感に包まれた2人の表情にも注目してみてください。

(それくらい、第二言語でのやりとりは緊張するということですね)

屋上をキャンバスに その2

 

なかなか立ち入ることができない屋上ですが、

先生の粋な計らいで、年に1回だけ、屋上で図工の授業を行います。

 

足下全部が緑のキャンバスです。

色とりどりのチョークを使って、思い思いに好きなものを描きます。

ケンケンパは、毎年誰かしらが描くモチーフですが、

今年は以前は見られなかった「マインクラフト」のキャラクターが現れました。

「口の形はどうしようか?」と女の子が相談し、

「うーん、ちょっと待って」と考えた男の子が、

白いチョークで真一文字の口を描きました。

四角で構成されるキャラクターにぴったりだと思ったのか、

女の子も「なるほどー!」と納得です。

 

せっかくの屋上でしたが、空を見上げることはそこそこに、

地面にしゃがんで一心不乱に創作活動に励んでいました。

どきどきの「どきん」2021年版

 

毎年恒例、小3詩の暗記発表会です。

題材は今年も谷川俊太郎さんの「どきん」。

まずは「どきん」手話翻訳版の、暗唱の発表です。

 

手話が母語である子どもたちが詩を楽しむためには、

まずは自分たちが理解できる手話で、詩が語られていることが大切です。

詩が持つ自由さと心地よさを狭めることなく、

別の言語に翻訳することはとても難しいことですが、

そこは手話ネイティブの先生の出番です。

詩のなかで多用されているオノマトペも、手話のCLやRSを使って、

日本語の詩と同様にバリエーション豊かに表現された、

すばらしい手話動画教材を活用します。

 

次は「ど」「き」「ん」のくじを引いて順番を決めて、

覚えた詩をホワイトボードに書きつけます。

書きつけた詩を最初から最後まで自分で確かめて、

納得したらみんなの方を振り返って終了です。

 

隣の教室から、1・2年生がぞろぞろと見学にやってきます。

「まず、手話に翻訳された詩を見て、理解を深めるんだよ」

「詩の暗記は1行ずつ増やして、少しずつ書いて覚えて、練習とたしかめを繰り返していくんだよ」

と、掲示している「どきん」の書き取りを、先生がペラペラめくりながら説明します。

「いーっぱい練習してるね!」と驚く1・2年生。

1年後と2年後には、自分の番が回ってくるんだよ。

 

今年は、司会進行からホワイトボード消し、

書かれた詩の添削からすべて、子どもたちが行いました。

結果は…全員ひとつも間違えずパーフェクト!

 

全員暗記できていたことも素晴らしいのだけれど、

授業時間内にみんなの発表を終わらせられたのは、

小4の先輩たちの段取りがよかったからだよと先生が言うと、

小3がすかさず後ろを向き、小4に「ありがとう!」

と、盛大な拍手を送っていました。

転ばぬ先の手話

 

靴の左右を逆に履いてしまう、小さい人のよくあるうっかり。

「靴が反対だよ」と伝えても、キョトンとするばかりでなかなか伝わらない。

そのような経験、誰しもあるのではないでしょうか。

 

そんな時、こんな手話表現で注意を促します。

視覚的な言語である手話にとって、難しい単語を使わずに

「形状」や「状態」などを表すのはお手のものです。

この手話表現、聞こえる小さい人にもわかりやすいと思いますよ。

 

しかし、動画の中のろうの先生、手話で話しながら

相手の足元までしっかりチェックできていて、さすが「目の人」です。

明晴ローラー作戦

 

「手の空いてる人、ちょっと手伝って!」

と、教頭先生が、職員室と事務室に声を掛けました(もちろん手話です)。

 

子どもたちが帰って、それぞれ自分の仕事をしていた先生たちは、

さっと席を立ち、校庭に集まります。部活の外部コーチまで来てくれました。

幼稚部さんが、外遊びの時に補聴器を落としてしまったようで、

お家から連絡がきたのです。

 

「よし、ローラー作戦で行こう」と、横一列に並び、

足で草をかき分けながら、じりじりと前に進みます。

しかし、刈られる前のトラック内の芝は、シロツメクサでモッコモコ。

本当に見つかるのかな…?などという心配をよそに、

なんと10分もかからず見つかりました。

 

やる前から、あれこれ悩まず行動する。

助けを求められたら、さっと手を貸せる。

明晴の先生たちのいいところです。

さいしょの登校日

 

新年度最初の登校日です。

 

やあやあ久しぶり、新しい仲間たちようこそ。

新しい先生は誰かな?

転入生は少し緊張の面持ちで、在園・在校生も少しはにかんだ顔で、

クラスメイトとのあいさつやお喋りがすんだら、すぐに青空始業式です。

 

そのあと、幼稚部さんは、これから毎日遊ぶことになる校庭を、

転入してきたお友だちと一緒に散歩し、小学部と中学部はクラス写真を撮ります。

あれ、変顔してるのは誰でしょう?

 

そして、子どもたちには大事な仕事が残されています。

明日の入学式の係を決め、ソーラン節に手話リズムに手話ポエム、

児童・生徒会長のあいさつなどを考えたり、練習しなければならないのです。

しかもタイムリミットの下校時間はお昼!

 

入学式の、あのすばらしい手話ポエムは、いつも前日に作られていたのですね。

さすがにあいさつは考えているだろうと、下校する生徒会長をつかまえて聞いてみると、

「まだ全然考えてないよ。帰ってから考えます。」

と、驚きの答えを発して、颯爽と帰っていきました。

明晴っ子が本番に強いのは知っていましたが、まさかここまでとは。

 

本番の入学式では、前日しか時間がなかったとは思えない

完成度と、堂々とした態度で、

子どもたちがそれぞれの役回りをこなし、発表していました。 

 

青空始業式

 

少し時間を遡って、今日は始業式。

新年度最初の、新入生以外の在校生・転入生が集まる日です。

感染症対策のため、今年度は校庭で行います。

 

小学部と中学部の代表があいさつをし、久しぶりの再会を喜びます。

校長挨拶では、「学」という漢字の成り立ちに、

「手」と「交わる」が入ってるという話を聞き、

まるで明晴学園みたいだねと、みんなでへーっと驚きます。

 

転入生と、新しい先生の紹介では、手話の名前を復唱したあと、

みんなでヒラヒラと拍手します。

「わたしも自己紹介するよ!」と在園生が前に出ようとし、

「新しく明晴にやってきた子だけでいいんだよ」と止められて、

先生に説明を受ける微笑ましい場面もありました。

 

最後は「明晴音頭」で締めくくり。

校庭いっぱいに輪になって、

「明晴」と「ろう」と「元気」をモチーフにした盆踊りを踊りました。

 今年度も、明るく元気にいきましょう。

蝶になったり、トンボになったり

 

 

 

虫とりをするにはまだ早い4月。

どうしようかねえと先生たちが話し合い、

ろう児にぴったりの楽しみ方を思いつきました。

虫の手話とペインティングを組み合わせたデフアートです。

 

手の甲を黄色や緑、黒や水色にペイントして、

蝶やトンボの手話を表して、先生たちが虫に扮します。

 

 「さあ、虫とりに行こう!」

 

子どもたちは大喜び。

お手製虫とり網を掴んで、校庭に飛び出します。

ヒラヒラと舞って移動する蝶の先生を追いかけ、

芝生にしゃがみこんで、バッタの手話で跳躍する先生を捕まえ、

鎌を動かし虫とり網から逃げようとする、カマキリの先生と複数で攻防します。

 

午後は選手交代、子どもたちが虫になり、先生たちが虫とり役です。

先生たちの動きを思い出しながら、蝶やバッタ、トンボや蜘蛛になって、

つかまらないよう、逃げ回ります。

 

「ずっとチョウチョなのも飽きちゃったな」

そんな時は、黄色から黒に塗り替えて

手話を変えると、蝶から蜘蛛に変身できます。 

蜘蛛になったとたん、なんだか顔も強そうな表情になりました。

芝生のどこかに先生が置いた、白い毛糸の蜘蛛の巣を見つけ出し、

その上で獲物を待ち構えます。

 

最後はみんなで、それぞれの虫の手話をしながらかけっこでおしまい。

 

本物の虫はいなかったはずなのに、目をつぶると

色とりどりの虫たちが飛び交う校庭が浮かんできます。

虫とりあそび

 

春休み明けの校庭は、しばらく草刈りをしていないので

シロツメクサでモッコモコです。

幼稚部さんたちは、お手製の虫とり網を持って、

虫とり遊びに飛び出しました。

 

バッタやチョウチョが出てくるにはまだ早い時期だったので、

ヒラリとモンシロチョウが現れようものなら、

広い校庭を、みんなでどこまでも追いかけます。

 

まだ時期が早いから少ないねえなんて先生同士で話していると、

虫さん、全然いないよーと子どもたちが訴えに来ました。

すると先生はしたり顔で

「それはね、みんながドタドタと走り回るから、虫さんが気付いて隠れちゃうんだよ」

と、いかにもな説明をします。

 

すると子どもたち、そうかと納得し、

「シーだよ」、「シー」、「逃げちゃうよ」

と口にひとさし指を押し当てて、抜き足差し足モードにチェンジして、

虫とり遊びを続行しました。

 

4月のテーマは「むし」です。

むしあそびはまだまだ続きます。

ようこそ明晴学園へ

 

4月9日(金)、入園式と入学式が行われました。

プロブラムは例年通りの内容を保ちつつ、

感染症対策のため、時間と参加人数はコンパクトに。

 

校長あいさつでは、飛行機のパイロットに扮した教頭も現れ、

出席者全員で「3、2、1!」と笑顔でカウントダウン。

新しい仲間を乗せ、飛行機「明晴2021号」が離陸しました。

 

手話を翼に、どこまでも高く、どこまでも遠く。

みんなで一緒に飛んでいきましょう。

本物がやってきた!

 

お正月遊びを堪能する幼稚部さん。

今日は、獅子舞を作っていたら本物がやってきました!

 

「獅子舞なんて、全然へいきだもんね。」

なんてうそぶいていた年少の星組さんは、

椅子から飛び上がって、先生の膝の上にまっしぐら。

「あれー?さっき噛まれたいって言ってたよねえ?」

なんて先生に言われても、

「やだやだ!怖いよー!」と前言撤回です。

 

星組以外の諸先輩方は、去年、一昨年も本物の獅子舞に遭遇しているので、

「頭を噛まれると、今年1年元気でいられる」ことを知っています。

去年は机の下に正座して隠れてしまった子や、

大泣きしていた子たちが、自ら獅子舞にスッと頭を

差し出す姿は、微笑ましくもあり、頼もしくもあります。

 

今年の獅子舞は人懐こいようで、頭をなでてとすり寄ってきたり、

おまけにいたずら好きのようで、工作途中の画用紙をパクリ。

(それを見た別のお友だちは、すかさず自分の画用紙を隠していました)

 

びっくりしたお友だちが泣いていると、先ほどあんなに

怖がっていた星組さんは、頭を噛まれてすっかり元気を取り戻し、

お友だちをからかうほどに復活していました。

はじめての書き初め

 

 

一月、新しい年を迎えた幼稚部さん。

今日は黒い服が多いなと思ったら、なんと書き初めに初挑戦です。

お題は「うし」。先生が指文字で「うし」ってなあに?と聞くと、

みんな高速の手話で「牛牛牛牛牛牛牛!」と答えます。

11月の千神祭で、十二支の物語を舞台で演じたので、

牛役だった子は、「僕、前に牛をやったよ!」と得意気です。

 

 

「こういう縦長の四角い紙に、う、しと書くんだよ。」

と、ホワイトボードの見本の上で、先生が手首のスナップをきかせて、

とめやはらいの動きを見せます。

「一枚書いたら、脇にある大きな紙の上に移して、それからまた新しい和紙に書くんだよ。」

と、ここまでの説明をみんなが理解したところで、書道会場に移動します。

 

床一面にブルーシートを敷き、互い違いに距離をとって、

黒い下敷きをブルーシートの上にテープで固定。

これなら下敷きが滑らないし、場所が固定されるので、

子どもたちがついつい接近してしまうことも防げます。

文鎮は、前の日に先生たちが校庭から拾ってきた石です。

和紙の上にちょこんと置かれた姿が、なんだかかわいいです。

 

ここであらためて、墨汁や筆の扱い方を説明します。

描き終えた和紙を床に対して垂直に持って移動してしまうと、

墨が流れてしまうので、慎重に水平に持って移動させる。

筆は墨につけたままにせず、必ず元の位置に戻す。

みんな早く書きたくてウズウズしながらも、

説明を聞き逃すまいと、しっかり先生の手話を見ています。

空中に指で「うし」と書いてイメージトレーニングをする子もいます。

 

それでは、書き初め開始!

真っ白い和紙に、恐る恐る墨をのせる子、動じずさらさら書く子、

おや、途切れ途切れに書き繋いだり、二度書きしている子もいますが、

今日は細かいルールは抜きにして、自分の書を楽しみます。

先生の説明通り、書き終わったら心を落ち着けて、

和紙を両手で水平に持ち、ソロリソロリと運びます。

 

ある程度、みんなが書けたところで、ふたたび先生から説明です。

いまから渡す和紙が最後の一枚であること、

丁寧に美しく書くことを心がけて、書き終わったら片づけに入ること、

書いたばかりの和紙は破れやすいので、作品を踏まないように外の洗い場に移動すること、

筆は墨を床に落とさないよう容器に入れて持ち運ぶこと、

外の洗い場で筆を洗ったら、中に入って手を洗ってお昼ごはんにすること、

昼食後、一番出来がよいものを選んで先生に提出すること、などなど。

 

そうして、書きはじめから最後の片づけまで、

一滴も墨を落とさず、書き初めを終えました。

見ていたこちらは、何のトラブルもなかったことに、正直拍子抜けしましたが、

ろう者にわかりやすい説明スタイルで、

かつ、年齢と理解力に合わせて、適切な情報量と、

的確なタイミングで説明できる手腕が

先生たちにあるからこそ、できる活動なのでしょう。

 

ついついかわいい子どもたちに目が行きがちですが、

先生たちに注目して動画をみるのも、おもしろいかもしれません。

楽しい防災教室

 

幼稚部さんの防災教室の様子です。

テーマは、「地震が起きたらどうなるの?その時どうしたらいいの?」

 

まずは、地震が起きたらどうなるの?

地震で家具が倒れて、床にものが散乱し、

電気もつかない真っ暗な部屋のなかを実際に移動して、

/地震/言う/(これが地震だ!)を体感してもらいます。

いつもと違う幼稚部の教室に、子どもたちは大興奮。

小さい子の手を握って暗い部屋を進むのは、ちょっとした冒険です。

 

「みんな、中はどうだった?いつもとおんなじだった?」と、先生が問いかけると、

「ちがった!床がでこぼこしてた!」「机が倒れてた!」「ブロックもいっぱい落ちてたよ!」

次から次へと子どもたちが答えます。

そこですかさず先生がたずねます。「みんな、お家におもちゃはある?」

「あるある!」「あるよ!」

「ねえ、そのおもちゃ…遊んだあとにちゃんとお片付けしてる?」

「してる!」「お片付けしてる!」と、多くの子が言うなか、

「…ううん、その辺に出しっぱなしにしてる…。」

嘘をつけず、正直に答える様子も微笑ましいです。

最近、お片づけが十分にできていないことが多かったので、

防災を学びつつ、日常生活を見直すことも先生たちの狙いです。

 

地震が起きたらどうなるの?を体感したあとは、

じゃあどうすればいいんだろう?を学びます。

「さっき、床に落ちていたものを踏んで痛かったよね。

そんな時は、お家のなかでも靴を履いていいんだよ。」

というわけで、次は靴の早履き練習です。

お友だちを押さない、無理に追い越さないことを約束して練習開始。

地震で物が散乱している想定なので、先生たちがブロックをばらまきます。

ケガをするかもしれないので、お尻を床につけずに履くこと。

履けた人から先生の前に一列に並んでいきます。

最後の子が履き終わると、ピョンピョン跳ねて大きく拍手。お互いの健闘を称えます。

 

最後は防災頭巾の早かぶり。

早くかぶらないと、水遊びで使っているヤシの木が、頭の上に落ちてきます。

そんな時、頭巾の名前を確認している暇はありません。

迅速にかぶることが大事です。

最初はグループに分かれ、人数分の防災頭巾を床に置いていましたが、

全員体験して2回目を行う時、先生たちが目配せし合いました。

そして人数分よりも少ない防災頭巾を床に置いたのです。

行き渡らなかった子たちは、ヤシの木が倒れてきちゃう!と大慌て。

そこで先生が、次の方法を教えます。

防災頭巾はいつでもどこでもあるわけじゃない。とにかく大事なのは頭を守ること。

リュックがあればリュックで、なにもなければ手で頭を覆うんだよ。

「こうやって守ればいいんだね?」

と、身体を縮めて頭を守る体勢をとる子がいました。

「そうだね。でも石垣のそばだと、崩れて落ちてくるかもしれないよ。」

「じゃあ、そこから離れてしゃがめば、崩れてきても大丈夫だよね!」

「そのとおり!」

正しい方法を導きだして先生にほめられ、ガッツポーズです。

 

まるでアトラクションのような防災教室、子どもたちは本当に楽しそうでした。

しっかり先生の話を聞き、自分の意見も伝える。

先生も、子どもの意見や反応を見て、次に話す内容や活動をアレンジしていきます。

先生と子どもたち相互のやりとりによって、

活動の質が高められ、さらに子どもたちが熱中していく。

まるで下から上へと渦を巻いて大きくなる、つむじ風のような時間でした。

どきどきの「どきん」2020年版

 

毎年恒例(?)、詩の暗記発表会です。

 

今年のお題も教科書から、谷川俊太郎さんの詩「どきん」です。

発表順を決めるため、先生が作ったくじを引きます。

どきんの「ど」を引いてしまい、トップバッター?いやだー!

と、椅子から崩れ落ち、後ろから先輩に励まされます。

 

ルールはひとつ。書き終わるまで後ろを振り返らないこと。

書き始めると、隣の教室からゾロゾロと1・2年生が見学にやってきました。

手の空いている先生たちも集まってきました。

教科書のこの詩を暗記して書いているんだって。

すごいなあと、教科書とホワイトボードの文字を見比べます。

そして、これはこういう詩なんだよ、と、ほかの子が、

手話に翻訳した「どきん」を1・2年生に披露します。

 

日本語が第二言語の子どもたちは、

「どきん」の手話翻訳動画を手立てに、日本語の詩を読み進めます。

ですので、人によっては日本語の詩の確認をする際に、

手話翻訳の「どきん」を表しながら確かめることもあります。

 

全文書き終わって確かめの時間に入ると、背後の子どもたちがザワザワし始めます。

あっちに移動したり、こっちに移動したりして、友だちの書いた詩を添削し、

「そこは「お」だよー!」

「それは消さなくても合ってるよ!」

と、思い思いに手話で応援します。

 

もちろんホワイトボードに向いている友だちに、

その手話は伝わらないのですが、応援に熱が入るあまり近づきすぎて、

先生に「こらこら、後ろに下がりなさい。」と、注意される場面もありました。

 

全部合っているのに自信がなく、書いては消してを繰り返し…。

みんながしびれを切らしたころ、ようやくくるりと振り返りました。

 

まずは、正解・不正解ではなく、何度も何度も確認したことを、先生がしっかりほめます。

結果は…ノーミス、暗記成功!

小テストでは、毎回どこか間違っていたので、喜びもひとしおでしょう。

かみしめるような表情が印象的でした。

 

時間が少なくなってきたので、仕切りを作って2人いっぺんに書きます。

先に終わった子はプレッシャーから解放され、

余裕の心持ちで、2人の詩を、教科書を見ずに添削しながら応援します。

昨年経験済みの先輩たちも、教科書片手に厳しい目で見つめます。

 

先に振り返った子は、先生のチェックが終わるまで、

いてもたってもいられず、神頼みを始めてしまいました。

焦らされながらの結果は、これまた暗記成功!

 

最後の友だちも成功すれば、全員ノーミスの記録達成です。

机に手をかけて確認する後ろ姿に、クラスメイトの熱い視線が注がれます。

最後の友だちが振り向きました。

先生ではなく、子どもたちでチェックしました。

果たして結果は?

毎日ちがう一日

 

2013年4月から2014年3月までの1年間、

だいたい同じ時間に、だいたい同じ場所から

グラウンドを定点撮影した写真をまとめました。

日々は繰り返しじゃないことがよくわかります。

ひさしぶりの再会

 

 

突然の休校から18日目、学校開放が始まりました。

校舎に入る前に、手洗いうがいをし、

玄関で先生の検温チェックを受けます。

その後、アルコール消毒をして教室へ。

 

久しぶりの再会のせいか、最初はよそいきの顔をしていた子どもたちですが、

いざ活動が始まると、あっという間に通常運転。

先生による今日の流れの説明で、

楽しい時間があることがわかって大喜びしたあとに、

勉強の時間もあると言われ、一気にテンションが下がります。

休校中のストレスを発散するように、グラウンドでも勢いは止まりません。

しばらく静かに仕事をしていた先生たちは、

リレーやケイドロに付き合って息も絶え絶えです。

逆に子どもたちは、晴れ晴れとした顔で帰っていきました。

数えて、作って、歌う、いも煮

 

幼稚部さん食育の日、いも煮です(11月のできごと)。

里芋の手話を覚えたり、数を数えたり、包丁の扱いを学んだり…。

食育のなかに、いろんな教科のエッセンスが入っていることがわかります。

 

「ネギを切ると目にしみちゃうよ。」と、訴える年少さんに、

年中さんが、「そうだ。目をつぶって切ればいいんだよ。」と、アドバイス。

大人からしてみればとんでもないアドバイスですが、素直に従う年少さん。

案の定手元が危うくなり、あわてて止める年中さん。

 

調味料は先生が入れますが、味を決めるのは子どもたち。

味見をしては、「ちょっとうすい」など指示を出して、

先生に出汁やしょうゆを足してもらいます。

子どもたちのOKが出たら完成。

 

「これは入れないの?」とカレールーの箱を持って不思議がる子に、

「だめだめ、それはまだ入れないの。最後に入れるんだよ。」と別の子。

山形県出身の先生が担当しているので、いも煮のベースは山形風。

シメにカレールーを入れるのも山形県方式だそうです。

 

いも煮は野外で楽しむ郷土料理。

お天気もいいし、みんなで外で食べましょう。

千神祭の舞台発表から数日しかたっていないので、

食べながら先生に手話リズムを披露している子もいます。

それならぼくはと、オリジナルの手話リズムを披露する子も出てきました。

それを見た年少さんも、負けじと手話リズムを創作しようとします。

 

「ぎゅう、にく、にくにくにく、いも、いも、いも、いも、…えーと…、ま、いっか、おいしいから。」

 

楽しくておいしい、いも煮会。

中学部の生徒も2階から「ちょうだーい。」とねだっていました。

千神祭本番その6

 

 

中学部の劇は「ド・レペ」※です。

海外研修先のフランスで、見て、聞いて、学んで、感じたことを、

オリジナルの劇にしました。

 

劇中の手話ポエムは、ろう教育の始まりから現代の明晴学園までを繋いで、

壮大な歴史を綴ったすばらしい作品でした。

 

手話ポエムの担当になった生徒は、前日まで昼休みの時間も惜しんで

廊下で先生に練習を見てもらい、どうすればより美しい表現になるのか、

練習を重ねていました。

まだ歴史の浅い明晴学園ですが、それでも千神祭のトリで

創作手話ポエムを披露することが伝統となりつつあるので、

その重圧とやりがいは、こちらが思っている何倍もの重みがあるのでしょう。

 

※ド・レペとはフランスの神父で、世界ではじめてろう学校を作り、

手話で教育を行ったとされる人物です。

千神祭本番その5

 

手話狂言「六地蔵」です。

小5のときにも手話狂言を演じているので、

小6は1年ぶり2回目の舞台。

昨年と比べて、所作が格段に洗練されています。

舞台に笑いつつも、型を倣い、身につけることの凄みを感じました。