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ようこそ明晴学園へ

 

4月9日(金)、入園式と入学式が行われました。

プロブラムは例年通りの内容を保ちつつ、

感染症対策のため、時間と参加人数はコンパクトに。

 

校長あいさつでは、飛行機のパイロットに扮した教頭も現れ、

出席者全員で「3、2、1!」と笑顔でカウントダウン。

新しい仲間を乗せ、飛行機「明晴2021号」が離陸しました。

 

手話を翼に、どこまでも高く、どこまでも遠く。

みんなで一緒に飛んでいきましょう。

本物がやってきた!

 

お正月遊びを堪能する幼稚部さん。

今日は、獅子舞を作っていたら本物がやってきました!

 

「獅子舞なんて、全然へいきだもんね。」

なんてうそぶいていた年少の星組さんは、

椅子から飛び上がって、先生の膝の上にまっしぐら。

「あれー?さっき噛まれたいって言ってたよねえ?」

なんて先生に言われても、

「やだやだ!怖いよー!」と前言撤回です。

 

星組以外の諸先輩方は、去年、一昨年も本物の獅子舞に遭遇しているので、

「頭を噛まれると、今年1年元気でいられる」ことを知っています。

去年は机の下に正座して隠れてしまった子や、

大泣きしていた子たちが、自ら獅子舞にスッと頭を

差し出す姿は、微笑ましくもあり、頼もしくもあります。

 

今年の獅子舞は人懐こいようで、頭をなでてとすり寄ってきたり、

おまけにいたずら好きのようで、工作途中の画用紙をパクリ。

(それを見た別のお友だちは、すかさず自分の画用紙を隠していました)

 

びっくりしたお友だちが泣いていると、先ほどあんなに

怖がっていた星組さんは、頭を噛まれてすっかり元気を取り戻し、

お友だちをからかうほどに復活していました。

はじめての書き初め

 

 

一月、新しい年を迎えた幼稚部さん。

今日は黒い服が多いなと思ったら、なんと書き初めに初挑戦です。

お題は「うし」。先生が指文字で「うし」ってなあに?と聞くと、

みんな高速の手話で「牛牛牛牛牛牛牛!」と答えます。

11月の千神祭で、十二支の物語を舞台で演じたので、

牛役だった子は、「僕、前に牛をやったよ!」と得意気です。

 

 

「こういう縦長の四角い紙に、う、しと書くんだよ。」

と、ホワイトボードの見本の上で、先生が手首のスナップをきかせて、

とめやはらいの動きを見せます。

「一枚書いたら、脇にある大きな紙の上に移して、それからまた新しい和紙に書くんだよ。」

と、ここまでの説明をみんなが理解したところで、書道会場に移動します。

 

床一面にブルーシートを敷き、互い違いに距離をとって、

黒い下敷きをブルーシートの上にテープで固定。

これなら下敷きが滑らないし、場所が固定されるので、

子どもたちがついつい接近してしまうことも防げます。

文鎮は、前の日に先生たちが校庭から拾ってきた石です。

和紙の上にちょこんと置かれた姿が、なんだかかわいいです。

 

ここであらためて、墨汁や筆の扱い方を説明します。

描き終えた和紙を床に対して垂直に持って移動してしまうと、

墨が流れてしまうので、慎重に水平に持って移動させる。

筆は墨につけたままにせず、必ず元の位置に戻す。

みんな早く書きたくてウズウズしながらも、

説明を聞き逃すまいと、しっかり先生の手話を見ています。

空中に指で「うし」と書いてイメージトレーニングをする子もいます。

 

それでは、書き初め開始!

真っ白い和紙に、恐る恐る墨をのせる子、動じずさらさら書く子、

おや、途切れ途切れに書き繋いだり、二度書きしている子もいますが、

今日は細かいルールは抜きにして、自分の書を楽しみます。

先生の説明通り、書き終わったら心を落ち着けて、

和紙を両手で水平に持ち、ソロリソロリと運びます。

 

ある程度、みんなが書けたところで、ふたたび先生から説明です。

いまから渡す和紙が最後の一枚であること、

丁寧に美しく書くことを心がけて、書き終わったら片づけに入ること、

書いたばかりの和紙は破れやすいので、作品を踏まないように外の洗い場に移動すること、

筆は墨を床に落とさないよう容器に入れて持ち運ぶこと、

外の洗い場で筆を洗ったら、中に入って手を洗ってお昼ごはんにすること、

昼食後、一番出来がよいものを選んで先生に提出すること、などなど。

 

そうして、書きはじめから最後の片づけまで、

一滴も墨を落とさず、書き初めを終えました。

見ていたこちらは、何のトラブルもなかったことに、正直拍子抜けしましたが、

ろう者にわかりやすい説明スタイルで、

かつ、年齢と理解力に合わせて、適切な情報量と、

的確なタイミングで説明できる手腕が

先生たちにあるからこそ、できる活動なのでしょう。

 

ついついかわいい子どもたちに目が行きがちですが、

先生たちに注目して動画をみるのも、おもしろいかもしれません。

楽しい防災教室

 

幼稚部さんの防災教室の様子です。

テーマは、「地震が起きたらどうなるの?その時どうしたらいいの?」

 

まずは、地震が起きたらどうなるの?

地震で家具が倒れて、床にものが散乱し、

電気もつかない真っ暗な部屋のなかを実際に移動して、

/地震/言う/(これが地震だ!)を体感してもらいます。

いつもと違う幼稚部の教室に、子どもたちは大興奮。

小さい子の手を握って暗い部屋を進むのは、ちょっとした冒険です。

 

「みんな、中はどうだった?いつもとおんなじだった?」と、先生が問いかけると、

「ちがった!床がでこぼこしてた!」「机が倒れてた!」「ブロックもいっぱい落ちてたよ!」

次から次へと子どもたちが答えます。

そこですかさず先生がたずねます。「みんな、お家におもちゃはある?」

「あるある!」「あるよ!」

「ねえ、そのおもちゃ…遊んだあとにちゃんとお片付けしてる?」

「してる!」「お片付けしてる!」と、多くの子が言うなか、

「…ううん、その辺に出しっぱなしにしてる…。」

嘘をつけず、正直に答える様子も微笑ましいです。

最近、お片づけが十分にできていないことが多かったので、

防災を学びつつ、日常生活を見直すことも先生たちの狙いです。

 

地震が起きたらどうなるの?を体感したあとは、

じゃあどうすればいいんだろう?を学びます。

「さっき、床に落ちていたものを踏んで痛かったよね。

そんな時は、お家のなかでも靴を履いていいんだよ。」

というわけで、次は靴の早履き練習です。

お友だちを押さない、無理に追い越さないことを約束して練習開始。

地震で物が散乱している想定なので、先生たちがブロックをばらまきます。

ケガをするかもしれないので、お尻を床につけずに履くこと。

履けた人から先生の前に一列に並んでいきます。

最後の子が履き終わると、ピョンピョン跳ねて大きく拍手。お互いの健闘を称えます。

 

最後は防災頭巾の早かぶり。

早くかぶらないと、水遊びで使っているヤシの木が、頭の上に落ちてきます。

そんな時、頭巾の名前を確認している暇はありません。

迅速にかぶることが大事です。

最初はグループに分かれ、人数分の防災頭巾を床に置いていましたが、

全員体験して2回目を行う時、先生たちが目配せし合いました。

そして人数分よりも少ない防災頭巾を床に置いたのです。

行き渡らなかった子たちは、ヤシの木が倒れてきちゃう!と大慌て。

そこで先生が、次の方法を教えます。

防災頭巾はいつでもどこでもあるわけじゃない。とにかく大事なのは頭を守ること。

リュックがあればリュックで、なにもなければ手で頭を覆うんだよ。

「こうやって守ればいいんだね?」

と、身体を縮めて頭を守る体勢をとる子がいました。

「そうだね。でも石垣のそばだと、崩れて落ちてくるかもしれないよ。」

「じゃあ、そこから離れてしゃがめば、崩れてきても大丈夫だよね!」

「そのとおり!」

正しい方法を導きだして先生にほめられ、ガッツポーズです。

 

まるでアトラクションのような防災教室、子どもたちは本当に楽しそうでした。

しっかり先生の話を聞き、自分の意見も伝える。

先生も、子どもの意見や反応を見て、次に話す内容や活動をアレンジしていきます。

先生と子どもたち相互のやりとりによって、

活動の質が高められ、さらに子どもたちが熱中していく。

まるで下から上へと渦を巻いて大きくなる、つむじ風のような時間でした。

どきどきの「どきん」2020年版

 

毎年恒例(?)、詩の暗記発表会です。

 

今年のお題も教科書から、谷川俊太郎さんの詩「どきん」です。

発表順を決めるため、先生が作ったくじを引きます。

どきんの「ど」を引いてしまい、トップバッター?いやだー!

と、椅子から崩れ落ち、後ろから先輩に励まされます。

 

ルールはひとつ。書き終わるまで後ろを振り返らないこと。

書き始めると、隣の教室からゾロゾロと1・2年生が見学にやってきました。

手の空いている先生たちも集まってきました。

教科書のこの詩を暗記して書いているんだって。

すごいなあと、教科書とホワイトボードの文字を見比べます。

そして、これはこういう詩なんだよ、と、ほかの子が、

手話に翻訳した「どきん」を1・2年生に披露します。

 

日本語が第二言語の子どもたちは、

「どきん」の手話翻訳動画を手立てに、日本語の詩を読み進めます。

ですので、人によっては日本語の詩の確認をする際に、

手話翻訳の「どきん」を表しながら確かめることもあります。

 

全文書き終わって確かめの時間に入ると、背後の子どもたちがザワザワし始めます。

あっちに移動したり、こっちに移動したりして、友だちの書いた詩を添削し、

「そこは「お」だよー!」

「それは消さなくても合ってるよ!」

と、思い思いに手話で応援します。

 

もちろんホワイトボードに向いている友だちに、

その手話は伝わらないのですが、応援に熱が入るあまり近づきすぎて、

先生に「こらこら、後ろに下がりなさい。」と、注意される場面もありました。

 

全部合っているのに自信がなく、書いては消してを繰り返し…。

みんながしびれを切らしたころ、ようやくくるりと振り返りました。

 

まずは、正解・不正解ではなく、何度も何度も確認したことを、先生がしっかりほめます。

結果は…ノーミス、暗記成功!

小テストでは、毎回どこか間違っていたので、喜びもひとしおでしょう。

かみしめるような表情が印象的でした。

 

時間が少なくなってきたので、仕切りを作って2人いっぺんに書きます。

先に終わった子はプレッシャーから解放され、

余裕の心持ちで、2人の詩を、教科書を見ずに添削しながら応援します。

昨年経験済みの先輩たちも、教科書片手に厳しい目で見つめます。

 

先に振り返った子は、先生のチェックが終わるまで、

いてもたってもいられず、神頼みを始めてしまいました。

焦らされながらの結果は、これまた暗記成功!

 

最後の友だちも成功すれば、全員ノーミスの記録達成です。

机に手をかけて確認する後ろ姿に、クラスメイトの熱い視線が注がれます。

最後の友だちが振り向きました。

先生ではなく、子どもたちでチェックしました。

果たして結果は?

毎日ちがう一日

 

2013年4月から2014年3月までの1年間、

だいたい同じ時間に、だいたい同じ場所から

グラウンドを定点撮影した写真をまとめました。

日々は繰り返しじゃないことがよくわかります。

ひさしぶりの再会

 

 

突然の休校から18日目、学校開放が始まりました。

校舎に入る前に、手洗いうがいをし、

玄関で先生の検温チェックを受けます。

その後、アルコール消毒をして教室へ。

 

久しぶりの再会のせいか、最初はよそいきの顔をしていた子どもたちですが、

いざ活動が始まると、あっという間に通常運転。

先生による今日の流れの説明で、

楽しい時間があることがわかって大喜びしたあとに、

勉強の時間もあると言われ、一気にテンションが下がります。

休校中のストレスを発散するように、グラウンドでも勢いは止まりません。

しばらく静かに仕事をしていた先生たちは、

リレーやケイドロに付き合って息も絶え絶えです。

逆に子どもたちは、晴れ晴れとした顔で帰っていきました。

数えて、作って、歌う、いも煮

 

幼稚部さん食育の日、いも煮です(11月のできごと)。

里芋の手話を覚えたり、数を数えたり、包丁の扱いを学んだり…。

食育のなかに、いろんな教科のエッセンスが入っていることがわかります。

 

「ネギを切ると目にしみちゃうよ。」と、訴える年少さんに、

年中さんが、「そうだ。目をつぶって切ればいいんだよ。」と、アドバイス。

大人からしてみればとんでもないアドバイスですが、素直に従う年少さん。

案の定手元が危うくなり、あわてて止める年中さん。

 

調味料は先生が入れますが、味を決めるのは子どもたち。

味見をしては、「ちょっとうすい」など指示を出して、

先生に出汁やしょうゆを足してもらいます。

子どもたちのOKが出たら完成。

 

「これは入れないの?」とカレールーの箱を持って不思議がる子に、

「だめだめ、それはまだ入れないの。最後に入れるんだよ。」と別の子。

山形県出身の先生が担当しているので、いも煮のベースは山形風。

シメにカレールーを入れるのも山形県方式だそうです。

 

いも煮は野外で楽しむ郷土料理。

お天気もいいし、みんなで外で食べましょう。

千神祭の舞台発表から数日しかたっていないので、

食べながら先生に手話リズムを披露している子もいます。

それならぼくはと、オリジナルの手話リズムを披露する子も出てきました。

それを見た年少さんも、負けじと手話リズムを創作しようとします。

 

「ぎゅう、にく、にくにくにく、いも、いも、いも、いも、…えーと…、ま、いっか、おいしいから。」

 

楽しくておいしい、いも煮会。

中学部の生徒も2階から「ちょうだーい。」とねだっていました。

千神祭本番その6

 

 

中学部の劇は「ド・レペ」※です。

海外研修先のフランスで、見て、聞いて、学んで、感じたことを、

オリジナルの劇にしました。

 

劇中の手話ポエムは、ろう教育の始まりから現代の明晴学園までを繋いで、

壮大な歴史を綴ったすばらしい作品でした。

 

手話ポエムの担当になった生徒は、前日まで昼休みの時間も惜しんで

廊下で先生に練習を見てもらい、どうすればより美しい表現になるのか、

練習を重ねていました。

まだ歴史の浅い明晴学園ですが、それでも千神祭のトリで

創作手話ポエムを披露することが伝統となりつつあるので、

その重圧とやりがいは、こちらが思っている何倍もの重みがあるのでしょう。

 

※ド・レペとはフランスの神父で、世界ではじめてろう学校を作り、

手話で教育を行ったとされる人物です。

千神祭本番その5

 

手話狂言「六地蔵」です。

小5のときにも手話狂言を演じているので、

小6は1年ぶり2回目の舞台。

昨年と比べて、所作が格段に洗練されています。

舞台に笑いつつも、型を倣い、身につけることの凄みを感じました。