研究発表「明晴学園の教育実践」
1月23日は午前中の講演につづいて、午後は明晴学園教職員による研究発表が行われた。小学部、幼稚部の発表の背景と骨子、発表に使われた資料の一部を掲示する。
小学部発表「教科としての手話」
発表者 赤堀仁美
明晴学園には正式な教科としての手話の時間がある。手話の時間では、専門のティーチング・スタッフが日本手話を高度に洗練された学習言語にまで高めるための授業を行っている。手話を教科として教えるとき、目標となるのは子どもが年齢相当の手話のレベルへの発達を遂げることであり、スタッフにはその確実な評価ができなければならない。さらに手話を書記日本語へとつなげる工夫も求められている。
手話科のスタッフに求められる資質は、まず日本手話を第一言語とするものでなければならない。そのうえで、ネイティブとしての手話で子どもを指導できること、言語的なスキルの評価ができること、また子どもの様々な発達面を理解し把握できていること、などが必須の要件としてあげられる。
指導上の留意点としては、日本語と日本手話を区別して扱うこと、子どもがあいまいな表現をしたときは、適切に指摘し、かつ明確な表現に言い換えるよう、たえず支援していくことなどがあげられる。

小学部発表「教科としての日本語」
発表者 長谷部倫子
明晴学園には「国語」の時間がない。代わりにあるのは「日本語」の時間だ。国語と日本語のちがいは、日本語の時間が日本語の朗読や聞き取りをせず、読み書きだけを教える点にあらわれている。しかし日本語という教科の名前には、もっと深い本質的な意味がこめられている。それは、日本語が明晴学園の子どもたちにとって「外国語」だということだ。ちょうど聞こえる子どもが英語を外国語として学ぶように、明晴学園のろう児は日本語を外国語として学んでいる。
この観点に立つと、彼らに日本語を教えるときの数々のむずかしさが容易に理解できる。それは私たちが英語の読み書きをするとき、どこがむずかしいか、どうすればうまくなるかとほぼぴったり一致する問題なのだ。
明晴学園の日本語の授業は、小学部の、ことに高学年から次第に教科としての比重を増してくる。それは小学部の高学年になるころ、子どもたちの手話が学習言語としての発達をとげているからだ。十分な手話の力があってはじめて、子どもたちは日本語に本格的に取り組むことができる。また十分な手話の力がなければ、どんなに日本語を教えようとしても壁に突き当たってしまう。
明晴学園で日本語を教えるためには、国語教師ではなく、日本語教師の知識と技術、経験がなければならない。そのようにして教えられる日本語は、「正しい日本語」であるよりは、「楽しい日本語」となることをめざしている。子どもたちは、文法や表記の正確さに引きずられるのではなく、自分の思いを伝える、相手に通じる中身のある文章を書けるようにと励まされる。

幼稚部発表「絵本の読み聞かせ、模擬授業『3びきのくま』」
発表者 池田亜希子
幼稚部は絵本『3びきのくま』を子どもたちにどう読み聞かせてしいるかの模擬授業を行った。
この模擬授業は、ステージ上に絵本を据え、その前に座った先生が園児3人に読み聞かせを行うという形式で行われた。園児3人は実際の園児ではなく、ほかのろう者教諭3人がその役に扮して行われている。
模擬授業ははじめに日本語対応手話などの不適切な言語、表現による読み聞かせのパターンが例示された。これは園児にわからない手話、通じない言語、ないしは言語様の表現やしぐさによって、教師が園児に絵本を読み聞かせていると「思い込んでいる」授業形式を再現している。
このあと、ろう者の日本手話による、わかる、通じる、そして子どもを引きこんでゆく読み聞かせが例示された。二つのスタイルの読み聞かせを対比することで、そのちがいが鮮明にあらわれ、またろう児への読み聞かせには本質になにが必要なのかが提示されていた。
なおこの模擬授業は手話通訳が意図的に省かれたため、映像の記録は残されたが日本語の記録は残っていない。これは日本手話による読み聞かせが、通常の日本語では表記しえない映像的な表現を豊富に含んでいたことによる。

